なかったことにしてきたものたち

母や友人が泊まり込みで
手伝いに来てくれていた日々が終わり
子どもと夫婦だけの生活がはじまった
 
すべてが初めてのことで
わからなくて戸惑うことばかりだった
 
手術後の傷口は痛むし
産後のむくみもひどくて
高血圧や貧血にもなり
寝ることが大好きなのに
全然まとめて寝ることができなくて
 
しっかりと産後うつの入口を
うろうろとした1ヶ月を過ごした
 
 
夫も最近になって
あの時は
仕事から帰ったら
いないんじゃないかっていう
不安があったって話していた
 
 
 
その日々の中で
今までの人生で経験したことのない
大号泣を何度かした
 
 
一度は夫の前で
他は子どもと2人の時に
 
 
こんなに泣いたことないな
泣きながら
どこか冷静に自分をながめていた
 
 
ホルモンの影響や
今まで経験したことのない
睡眠不足による疲労によって
追い詰められて出てきたのは
そこにいたけど
いないことにしてきた自分だった 
 
 
 
いろんな自分がいた
 
 
 
ある時は
子どもを抱いて泣きながら
 
助けて欲しいのに
どうやって助けを求めたらいいのか
わからないって泣いていた
 
 
泣いてるのは
今の自分というよりは
もっと小さな自分な感じがした
 
 
 
そうだったんだ
本当は助けて欲しかったんだ
助けを求めたかったんだ
ずっとそんなふうに生きてきたんだ
 
 
それは新しい気づきで
そのまま泣きたいだけ
泣かしてあげていた
 
 
 
子どものことを
働いている夫に負担にならないようにと
一人で引き受けすぎて
できることをしようとしてくれている
夫の手を振り払っていたのは自分だった
 
 
 
 

またある時は
子どもがベビーベッドで寝ている時
少し離れたところで
夫婦で食事をしていて
 
ひとりでさびしくないかな
と心配になる
 
そこには自分の投影が
あることに気づいて
 
私はそんなにさびしかったのか
と驚く
 
さびしさがひたひたとたまっている
大きな池の淵に立ち
その大きさに息を呑んだ
 
 
 
 
 
子どもを通して
自分の中で
隠れていた子どもが
目を覚ましていく
 
 
なかったことにしてきたものたち
大丈夫なことにしてきたものたち
 
 
それはあったし
大丈夫なんかじゃなかったんだ
 
 
その存在に気づき
改めて自分の一部として
迎えいれることができたのは
この大変な日々の
ご褒美のように感じている
 
 
 
そのままないことにしていたら
きっと子どもの中に生まれる
同じような思いに
気づいてあげることは
難しいだろうから
 
 
 
きっと
これからも
子どもを通して
いろんな自分に
光があたっていくのだろう