エリーさん

少し前に
鍼灸の施術を受けに行ったとき
その日は刺激が少し多かったようで
 
サロンから外に出てみると
身体がふらふらになっていることに気づき
少し休んでから帰ろうと
近くにあったカフェに入り
 
静かに
じっと
身体が落ち着いていくのを
待っていた。
 
 

ふと目線を上げると
目の前には大きな絵がいくつか展示されていた。
 
 
その絵たちは
瑞々しさや生命力
いのちを見る
優しくあたたかい眼差しを持ち
 
ヨレヨレになった身体に
吸い込まれそうになっていた意識を
なんとかここに踏みとどまらせようと
必死だった私をまるごと
何か大きなもので包みこみ
 
自分の中の生命力が
共鳴していくような
軽やかな躍動感が
身体の中に静かに広がっていった。
 
 
 
 
その日、
そのカフェ併設の空間は
大宮エリーさんの絵の展示期間だったようで
 
その時に持ち歩いていた
吉本ばななさんの新刊を読みながら
 
 
ばななさんの小説と
エリーさんの絵を
いったりきたりしながら
 
とても贅沢な世界の中で
身体が回復するまでの時間を過ごした。
 
 
それぞれの作品の中で
自分の何かが反応し
こみ上げてくる涙を
じっと堪えている姿を
お隣でお茶をされていた紳士に
時々、不思議そうに眺められながら。
 
 
偶然の重なり合いの中で
たくさんのものに助けられながら
生きている
そんな瞬間の小さな出来事に
生きている自分の実在を感じる
満たされた時間だった。