日常からはなれて

少し前に東京都現代美術館で開催されていた回顧展「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」へ行ってきました。
 
この展示について知ったのは最終日の10日ほど前で、すでに予約チケットは完売していて、1時間以上待つ当日券しかないようだったので、並んで待つのはなぁ・・・と一度は諦めていたのですが、
また数日後にこの展示の情報が目に入り、
なんだかどうしても行きたくなり、何かに突き動かされるようにこの回顧展へ足を運びました。

 
 
回顧展、本当に素晴らしかったです。
 
石岡瑛子さんは、アートディレクター、デザイナーとして世界で活躍された方で、
広告やグラフィックデザインやミュージックビデオ、また舞台や映画やオリンピックの衣装など、
多岐に渡る分野での作品が展示されていました。
 

その中でも特に衣装が素晴らしく
衣装とともに、その衣装が使われた映画や舞台、
北京オリンピックの開会式などの映像が流れていました。
衣装をパフォーマーの方が着て、
動きが生まれた時の躍動感や
その周囲の場と一体となって動くようなエネルギーが
身体にとても強く響いてくるようで
どこかエモーショナルなところに訴えかけてくるクリエイションを前にして
泣きそうになるのをこらえながら、しばらく立ち尽くしていました。
 

 
どの作品にも、生々しさと洗練された美しさ
相反するようなものがその中に表現されていて、
「生きる」ということに響いてくるクリエイションばかりでした。

 
会場にご本人がインタビューを受けている音声が流れていて、視覚、聴覚、響きを通しての触覚など、感覚を通してより身体的に感じられる展示も素晴らしかったです。
低く落ち着いた声から石岡瑛子さんの情熱やエネルギーが伝わってくるようで、それが心地よく、途中の休憩場所でしばらく座って聴いていました。
声の響きって、その方の身体という楽器を通して発せられるので、いろいろなものが表現されていて興味深いです。
 
 
 
 
「人の真似をしない。
 流行を追わない。
 
 時代を超えたもの
 タイムレスであること
 オリジナリティがあること
 これでサバイブしていく道を探していく。
 
 本能でジャッジしている。
 身体の中にたくさん溜め込んできたものが
 財産であり
 重要なものが溜め込まれていて、
 必要なときに出てくる。
 
 私はどう作っていきたいか
 そこから始める。
 大衆が何を望んでいるか?からはいらない。
 自分の中に
 大衆が喜んでくれるエッセンスが含まれている。
 
 昨日と今日と明日しかない
 そのくらいの範囲でしか自分を見つめられないし、
 考えられない。
 それにベストを尽くすことで次につながる。
 
 保証なんてないところから
 チャレンジを続けていけるのか。」

 
 
 

全てを見終えて、
作品が素晴らしいのはもちろん、
存在そのものが大いなるクリエイション、作品になっている生き方のかっこよさに圧倒され
静かな興奮とともに自分本来の姿が立ち上がってくるような力強さを感じていました。

 
なかなか自由に海外へ行けない社会状況の中、
海外旅行に行ったくらいのリフレッシュとエネルギーチャージができた体験でした。
 
 
 
昨年見た川久保玲さんのインタビュー「RBG 最強の85才」のルース・ベイダー・ギンズバーグさんなど
この世代の女性が社会で活躍するには、どれだけの厳しさや孤独と対峙しながら、ご自身を生きてこられたのだろうかとその道のりを思うとうまく言葉が出てきません。
 
自己と向き合いながら生きてきた方が語る言葉は力強く、そんな大先輩たちの言葉や生き様に励まされてきたこの1年でした。
 
 
東京都現代美術館での展示は終わってしまいましたが、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで3/19までグラフィックアート作品の展示を見ることができるようです。
 
 
 
帰りにこの体感をもう少し感じていたいと本を購入しました。
読みながら言葉から伝わってくるエネルギーに触れ、再び活力をいただいています。